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マリアの爪痕 21.チェイサーの仕事 敵のビーターがシリウスの背に向かってブラッジャーを放つ。 重い一撃ではあったが、シリウスはほんの少し軌道をずらし、それを避ける。 するとその下方向から飛翔してきたプラムがブラッジャーを打ち、追いかけるリオンの箒の先端にぶつけた。 「うわっ!!」 柄が上向き、ぶつかった衝撃で吹っ飛ばされたリオンは、体勢を立て直すには時間が必要だった。 下方向を見たシリウスは、プラムに親指を立ててにっと笑いかけた。 プラムは悠然と微笑み、飛ばしたブラッジャーを追っていった。 思っていたよりもずっと、彼女は勇敢な女性のようだ。 シリウスはゴールポストを睨み、そしてその前に立ちはだかるキーパーをも激しく睥睨した。 そこには、自分をねめつけるように殺気立っているセブルスがいた。 止めさせるものか。 そう思いながら、ぐんと先ほどよりも速度を上げ、クアッフルを振りかぶる。 綺麗に弧を描いたクアッフルは、そのまま左側のゴールポストへとシュートが決まった。セブルスは今一歩のところで手が届かなかったのだ。 「ざまーみろ!」 ぐっと拳を振るったシリウスは、嬉しそうにそう叫んだ。 そのままクアッフルは敵のチェイサーが持ち去り、全速力でグリフィンドールのエリアまで向かっていった。 しかしそのすぐ目の前、鼻先が掠め合うような近さで、モニカがクアッフルを叩き取る。 「!」 クアッフルを奪えたことに上機嫌なモニカはそれを横切ったに手渡し、頑張れと声援を送った。 まさかの女の子二人のファインプレーに、思わずシリウスはぽかんと口を開く。 は思ったよりもしっかりと、必死になってクアッフルを守りながらゴールへ向かっている。 その真摯な姿に、自然と笑みが零れた。 「!いけるぞ!」 敵のチェイサーをなんとか潜り抜け、はゴールポストまでやってきた。 一瞬の刹那だけセブルスと目が合い、びくりと肩を竦ませるが、次の瞬間。 「くっ・・!」 の真横を通ったブラッジャーがセブルスの肩を掠め、セブルスはバランスを崩した。 キーパーがふらついたその隙を突き、は中央のゴールポストに懇親の力を込めてクアッフルを投げ放った。 「・・・っ・・」 飛距離のないその軌道は危うくゴールポストの輪にぶつかりかけたが、ゴールが決まる。 落ちたクアッフルは戻ってきたリオンが拾った。 「・・・・・・入った・・」 呆然と呟いたその反対側で、ジェームズの声がした。 が何だろうと目を向けたと同時に、試合終了の笛が鳴る。 満面の笑顔でこちらを振り向いたジェームズの手には、金色に輝くスニッチが握られていた。 「やったーーー!!」 「はうっ?!」 突然背に圧し掛かった重みを感じ、はびっくりした。 後ろではモニカがきゃっきゃと大喜びではしゃいでいる。 振り向けば、リリーとプラムもぱちんと手を合わせていた。二人揃ってを見つめ、柔らかな笑みを見せた。 「やったじゃない、!」 「まさかゴールまで決めるなんてっ!練習の成果ね!!」 二人に褒められたは、ようやく現在の状況を理解した。 試合に勝利したのだ。 自分も点を入れることができた。だからみんなが褒めてくれている。 「でも、ピーターもよく頑張ったわ!スネイプにブラッジャーを当てたんですもの!」 「ぼくっ・・・ぼく、やったんだ!!」 ピーターは耳まで真っ赤に染めて興奮気味に喜んでいる。 がゴールを決める前にブラッジャーを放ったのは、どうやらピーターだったらしい。 その武勇を見ていたプラムは彼を存分に褒め称えている。 あのブラッジャーの一撃がなければ、自分は絶対にゴールを決められなかっただろう。 も心からピーターに感謝した。 「!」 「よくやった!!」 離れた場所で喜びを分かち合っていたジェームズとシリウスがを呼び、近くまでやってきた。 喜色に満ちた表情での頭を撫で回し、二人は口々にを褒めた。 その手はとても温かく、触られていて気持ちがいい。 「いやぁ、いい飛びっぷりだったよ!」 「ああ。ハーベルからのパスもしっかり受け取れてたし、敵のチェイサーも上手くかわせてた!」 「何より、よくスネイプの隙を突いたよ!」 なんだか二人に褒められると、本当に嬉しく思うことができた。 二人とも飛行センス抜群で、スピードもテクニックもより断然上だ。 そんな人たちに褒められれば、悪い気などするはずがない。 「私・・・っできた・・!」 微笑みながら呟けば、みんなは優しく笑ってくれた。 ジェームズはくすぐるようにの頬を撫で、そっと耳打ちする。 「だから言っただろう?キミはできるって」 ピーターと同じように真っ赤に染まった顔は、心地よい熱を帯びていた。 どきどきするけど、なんだかすごく嬉しい。 気付けば、リリーがジェームズに対して何やら文句を言って耳を引っ張っている。 それを見てみんなが笑い、マダム・フーチが「早く下りてきなさい」と注意する。 平和なこの日々に、はこの上ない幸せを感じた。 このまま素敵な学校生活が送れたら、自分は他に何も望まないだろう。 |