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マリアの爪痕 04.歓迎会 数分後、ようやく今年の組み分けの儀式は終わりを告げた。 マクゴナガルは速やかに帽子を片付け、教員席へと向かう。 中央の金色の椅子から立ち上がったアルバス・ダンブルドアは、両腕を大きく広げ、歓迎の言葉を口にした。 「新入生の諸君、おめでとう!さっそくホグワーツについての説明をしたいところじゃが、まあ堅苦しい挨拶は後でもよい。今は存分に歓迎会を楽しむべきじゃ」 ダンブルドアの明るい声を合図に、それぞれのテーブルに色とりどりのご馳走の山が現れた。 ジェームズとシリウスは既に手前にあるチキンへ手を伸ばしている。 「さあ、いただこう!」 空だった大皿には、が今まで見てきた中で一番たくさんの料理が並んでいる。 リリーもうきうきした表情で小皿に食べ物を取り分けていた。 は隣でチキンに齧りついている二人を一瞥した後、かぼちゃスープに口をつけた。 喉を通る温かいスープの味に、なんだかほっとさせられる。 「ここでは食事に遠慮なんていらないみたいだね」 「そうだよ、だからキミはもっと食べたほうがいいね!」 苦笑したリーマスがポテトにフォークを突き刺し、ジェームズがその腕の細さに嘆いた。 は心の中でこっそりジェームズに同意する。 セブルスとはまた違うが、リーマスもまた健康とは程遠そうなのだ。 「は何が好きかしら?」 一通り食事を終えたに対し、リリーが小皿にフルーツパイを取って尋ねた。 いつの間にか食卓にはたくさんのデザートが置かれている。 は迷いながらも、シリウスの前にある苺のミルフィーユを指差した。 「これか?」 シリウスがすっとミルフィーユの皿をの前に置いた。 リリーは「余計なことしないで」という顔をしたが、は顔を赤くしてお礼を言った。 「っありがとう・・!」 「どーいたしまして」 彼はふっと一度笑ってから、すぐにかぼちゃジュースを飲み始めた。 は口元を緩めたまま、ミルフィーユをリリーとリーマスに分けてあげたのだった。 「さて、皆今宵のご馳走に満足したことじゃろう。今度こそ、新学期を迎えるにあたって少し話をしようかの」 デザートの皿が一つ残らず消えた頃、ダンブルドアが話し始めた。 はお腹が膨れたこともあり、少し眠気を感じていた。 「まず例年通りの禁止事項じゃが、学校近辺の森は立ち入り禁止じゃ」 「禁じられた森のことだね」 隣でぼそりとジェームズが言った。 「次に、今年から校庭の一角に暴れ柳を植えることとなった。皆これにも近づかんように」 暴れ柳と聞いて、生徒たちは途端にざわざわし始めた。 は義父の書斎で読んだ、ある本の内容を思い出した。 その本ではたくさんの植物が解説されており、どこかで暴れ柳についても書かれていた記憶がある。 近づくものには容赦なく攻撃してくる、とても危険な大樹だったはずだ。 何故そんな危険なものを、わざわざ学校の一角に植えるのだろうか。 ふと疑問に思ったが、ダンブルドアが式の締めくくりとして校歌を歌うことを提案したために、は考えることを中断させられた。 監督生のシルフ・バトラーに続き、グリフィンドールの一年生たちは幾つもの階段を上り、廊下のつきあたりまでやってきた。 そこにはピンクの衣装に身を包んだ、ふくよかな女性の肖像画がかかっている。 シルフは先頭に立ち、太った婦人に合言葉を告げた。 すると肖像画が開き、その先の穴へと一年生は誘導される。 穴の先は、グリフィンドールの談話室に繋がっていた。 広い円形をした談話室は、シンボルカラーである赤色でコーディネートされた、温かみのある場所だった。 「男子は向かって左、女子は右にそれぞれの寝室がある。今日は疲れただろうから、早めにベッドに入ることをお勧めするよ」 シルフは上級生の中でも体格の良い、ハンサムな青年だ。 下級生の何人かは彼を見てひそひそと話をしている。きっと彼の容姿と人柄について語っているに違いない。 はリリーと一緒にいそいそと女子寮への螺旋階段を上がった。 後ろでジェームズがおやすみを言っていたが、リリーがそれを聞いていたかはわからなかった。 寝室には真紅の天蓋とカーテンのついたベッドが四つ横たわっていた。 は自分の荷物が置かれている窓際の机に足を伸ばす。 リリーはすぐ隣のベッドで疲れたように突っ伏していた。 「あと二人、ルームメイトが来るわ」 誰かが階段を上がってくる気配がし、そのすぐ後に扉が開かれた。 やってきた二人は寝室を見渡しながらとリリーを見た。 一人はよりも身長の低そうな、栗毛をカールさせた女の子。 もう一人は蜂蜜色のストレートヘアをカチューシャでまとめている華奢な子だ。 「あたし、モニカ!モニカ・ハーベルよ。よろしくね」 言うなりとリリーに笑いかけたモニカは、鈴を転がしたような声をしている。 とても愛嬌のある性格をしているせいだろう、は彼女とならすぐに仲良くなれそうな気がした。 「私はプラム・ローレンス。マグル出身なの。色々教えてね」 「まあ嬉しい!わたしもマグル出身なの!」 どことなく気品がありそうなプラムは、モニカとは違って落ち着いた雰囲気の女の子だ。 マグルとは思えないほど、ここに馴染んでいる気がする。 同じ境遇の子に会えた嬉しさか、リリーは満面の笑みを浮かべていた。 「リリー・エバンスよ。リリーって呼んで」 「私は・。よ、よろしくね・・っ」 ぎこちない挨拶を終えると、女の子たちは気の済むまでお喋りを繰り広げた。 二人にヴァイオレット色の瞳を見せるのには躊躇ったし、不安は拭えなかった。 だがモニカはいつでも笑ってくれるし、プラムは言葉を待ってくれた。 それに何よりも、リリーがすぐ助け舟をよこしてくれる。 こんな自分でも受け入れてもらえるんだと、ほんの少し自信がついた。 そしていつの間にか話に花は咲き、は無事にルームメイトたちと打ち解けることができたのだった。 |