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マリアの爪痕 02.この出会いは偶然か、必然か 速度を落とし、やがて汽車が停車した頃を見計らって、たちは通路へ出た。そこにはいかにも険悪な雰囲気を漂わせているジェームズたちが立っており、互いに睨みを利かせ合っていた。 それを見かねたリリーは、わざと三人の間に割り込んでセブルスに話しかけた。はその後ろで苦笑を浮かべる。 「セブ、早く降りましょう」 「ああ」 「リリー、僕たちも一緒に・・」 「ポッター、わたしたちは貴方と一緒にいたくないわ」 「ひっどいなぁ。それから、僕のことはジェームズって呼んでくれないかい?」 「さ、行きましょう」 ジェームズの言うことは無視して、リリーはの手を取り、汽車を降りた。 既にたくさんの生徒たちが誘導されており、黒い塊がぞろぞろ連なっている光景があった。 はなるべく歩幅を小さくして、足を踏まれないように気をつける。 すると、目の前に大きな茶色い壁が立ち塞がり、はそれに顔をぶつけた。 「きゃっ・・!」 「おお、すまねぇ!大丈夫か?」 よろけたの背を、とても大きな手が支えた。 はそれが目の前に立ち塞がっていた、壁ではない何かだということを認識し、身を竦ませた。 顔を上げれば、そこには髭面の大きな大きな男性が、自分をしっかり立たせようと腕を伸ばしていたのだ。 その黒い黄金虫のような目は、自分を心配するように少し伏せられ気味になっていた。 「、大丈夫っ?」 「うん、だ、大丈夫」 「本当にすまなんだ。よくやっちまうんだ。お前さん、イッチ年生だろう?小さいもんで、よくぶつかっちまうんだ」 「いえ、大丈夫ですから・・」 「ほんならいいんだ。俺はルビウス・ハグリッド、ホグワーツの森番をやっとる」 安心したように笑いかけられ、自身も少しだけ安心した。 どうやらホグワーツの関係者で、乱暴な人ではないようだ。 ハグリッドはのっしのっしと歩を進め、遠くの生徒にも聞こえるように大きな声を発した。 「イッチ年生!イッチ年生はこっちだ!俺についてこい!」 はもう一度リリーと手を繋ぎ、狭い小道を歩いた。 後ろにはセブルスが、二人の前ではジェームズとシリウスが歩きながらハグリッドと話をしている。 しばらくと経たないうちに道が開けてきて、やがて黒い大きな湖のほとりに出た。 その向こう岸には高い丘のような高地がそびえ、頂に立派な城が見える。 きっと、あれがホグワーツなのだろう。 とリリーはハグリッドの後ろに並び、指示を待っていた。 「四人ずつボートに乗るんだ」 ハグリッドの言葉を聞いた途端、リリーがを引っ張り、セブルスの後ろまで退いた。 首を傾げただが、すぐにその理由に辿りついた。 前方では、ジェームズがとリリーの名前を呼びながらボートに乗り込んでいたのだ。 リリーはあの二人と一緒にボートに乗るのを避けるため、後ろへ退いてきたに違いない。 少しして、ジェームズたちが渋々他の人たちとボートに乗ったのを見届け、たちはほとりへと近づいた。 「足元に気をつけてな」 ハグリッドの手を借り、はボートに乗った。 セブルス、リリー、の順で乗った後、次は一人の男の子が端のほうに腰かけた。 鳶色の髪をした、とても細身の男の子だ。 彼はボートに乗り込むと、目の合ったに柔らかく微笑んだ。 その微笑みは優しいのだが、どこか儚さが含まれているような気がした。 「やあ、はじめまして。僕はリーマス・J・ルーピン」 「わ、私、・」 「リリー・エバンスよ」 リーマスは愛想よく、リリーの二人と握手を交わし、巨大な古城を見上げた。 も一緒になって湖の先を見つめるが、突如耳に入った大きな声に畏縮してしまう。 「進めぇ!」 ハグリッドの掛け声に反応するように、ボートが動き出した。 鏡のような真っ黒の湖面を進み、少しずつ城が近づいてくる。 はその美しい景色に見とれながら、ふと思い出した疑問を口にした。 「ね、リリー」 「何?」 「リリーたちはあの二人がコンパートメントに来る前から、二人のことを知っていたの?」 前方に見える、ジェームズとシリウスが乗っているボートを指差した。 リリーは初めてから話しかけてきたことに破顔するが、ジェームズたちを視界に入れた途端、少しむすっとした。 「最初いたコンパートメントで一緒だったんだけど、なんだか不愉快だったから、貴女のいたコンパートメントに移ったの」 「・・・そう」 「でもそうして正解だったわ!だってと友達になれたんですもの!」 嬉しそうに声音を明るくして、リリーが言った。 はそれが自分にとっても最高に幸運であったと、心の中で喜んだ。 今までには一人も友達がいなかった。 自分という存在の危うさと、異質な瞳の色に脅かされ、ずっと孤独を感じていた。 そんな自分に、リリーは声をかけてくれた。仲良くなってくれたのだ。 感謝していないはずがない。 「私も、嬉しい・・!」 きゅっと握られた両手は、暑い夏の空気とは別に、ほんのりとあたたかかった。 |