あと少しで夕食の時間になる。今日のパーティーのテーブルは、きっとたくさんのお菓子で溢れ返ることだろう。段重ねの大きなケーキ、柔らかなプディング、甘いファッジやタフィー、パイはもちろん、香ばしいフラップジャックスなど、どれも僕の大好きな甘いものだ。
談話室のソファに腰かけ、読みかけの本にしおりを挟み込む。隣ではジェームズがピーターとチェスをしており、ピーターの加勢にシリウスが加わっている。でもたぶん、勝つのはジェームズだ。シリウスが加勢に入ったとき、既に負けかけていたのを知っている。今から挽回するのは難しいだろう。
僕は黙ってチェスの勝負の行方を見守り、ふと彼女の姿がないことに気がつく。そういえば、今日はまだ一度も見かけていない。
どうしたのかな、なんて思っていた矢先に、女子寮の扉が開いた音がした。次いで軽い足取りで階段を降りてくる音も。僕は反射的に階段先を見つめ、現れた少女の姿に微笑んだ。
「やあ、」
「あ、リーマス!」
穏やかに声をかけると、は気色に満ちた表情でこちらにやってくる。やはり足取りは軽い。もちろんその理由は今日がハロウィンだからだということは予想がついていて、今から彼女が口にする言葉も僕にはすぐわかった。
「Trick or Treat!」
両手を僕に差し出して、にこにこしているを見て、また笑みが漏れた。僕はポケットに手を入れて、用意しておいた小さな包みを取り出した。
「はい、これでいい?」
「ありがとう!」
優しくてのひらに包みを載せてやれば、は嬉しそうに目を輝かせてお礼を言った。
うん、可愛い。
思わずそう思って、僕はとりあえず微笑み返した。隣では残念そうに「降参」と声を上げるピーターの声がして、ジェームズが満足した様子で今度はシリウスに勝負を持ちかけていた。そのやり取りを見たは、次のターゲットを見つけたとばかりにジェームズたちのところへ行こうとした。でも僕はそんなの腕を掴み、そのまま引き寄せる。
「自分はもらっておいて、僕には何もくれないの?」
このまま悪戯しちゃおうかな。とかなんとか耳元で囁いてあげると、は顔を真っ赤にして慌て出す。わたわたとローブのポケットをまさぐるが可愛くて、僕は少しずつ腕に込める力を強くした。ポケットから取り出されたのは綺麗にラッピングされた箱で、はそれを恥ずかしそうに僕に手渡した。
「は、はい・・っ」
の小柄な手をきゅっと握って、僕は「ありがとう」の言葉を言った。はにかむの髪を撫で、にっこりと笑顔を浮かべる。
「でも、これだけじゃないよね?」
「え・・・?」
まだ何かあるのかと首を傾げた彼女の唇を奪い、僕は本日最高の甘さを味わった。
お菓子だけならいらないよ。
(だって僕が一番欲しいのは君だから)
...end 2009/11/01
(Happy Helloween!)