僕は最近お気に入りの女の子を見つけた。ちょっと気が強くて、すごく真面目で、腕っぷしもなかなか。その子はとにかく面白い。見た目は平凡で、どこにでもいる普通の女の子なんだけどね。なんだか妙に気になっちゃうんだ。眠る前にふと彼女のことを思い出したり、ひとたび見かければどうしても話しかけたくなったり・・これって、おかしいかな?べつにおかしくないよね。まぁべつにわかってもらわなくてもいいんだけどさ。だってこの気持ちは、僕にしかわからないと思うから。
「少なくとも、シリウスにこの気持ちはわからないだろうね!」
「は?」
大広間にて、僕はいつもの四人組でテーブルの一角を陣取りながら夕食を食べていた。隣にはなんだか間抜けな面をしているシリウスがいる。大口を開けて、片手に持ったチキンに齧りつこうとしていたらしい。
「何のことだよ?」
「べつにー。色気より食い気のキミに、今の僕の気持ちはわからないんだろうなーってさ」
「・・お前、またあのレイブンクローのヤツのこと考えてんのか?」
「だよ!!!何度名前を言わせるつもりだい?」
「いや、べつに聞いてねぇし・・つか返せ!」
うんざりしたような顔をしているシリウスの手からチキンを引ったくり、僕は不満を漏らした。この一、二週間、ずっとの名前を口にしているというのに、シリウスはなかなか彼女の名前を覚えてくれない。興味のないものには本当に頓着しない性格だ。なんて自分勝手なんだろう!
ぐちぐちと文句を言ってチキンを取り返そうとしてくるシリウスを掻い潜り、僕がチキンに歯を立てたときだった。
「ジェームズ、お目当ての子が来たみたいだよ」
大広間の入り口を見てリーマスが言った。僕はすぐさま食べかけのチキンをシリウスに押し付け、扉の辺りを凝視した。大広間にやってくる大勢の生徒の中にの姿を見つけ、素早く駆け出す。またシリウスが何か文句を言っているようだったけど、そんなものは耳に入れなくても問題ないだろう。
「やあ、!また会えた――」
「さよなら」
軽い足取りで彼女に駆け寄ったものの、見事にかわされてしまった。うん、いつも思うけどって僕を避けるのが上手いんだよね。さっと通り過ぎていこうとするの隣に並び、僕はしみじみと思った。
「ねぇ、よかったら今度のホグズミード――」
「行かない」
「まだ言い終わってないのにー」
「予想がついた。行かない」
「えー、行こうよー!僕と行くと楽しいよー?」
「行かないったら行かない。というか、何で私があんたとホグズミードに行かなきゃならないの?」
「そんなの、僕が行きたいからさ!」
自信を持ってそう言えば、は眉間に皺を寄せて拳を震わせていた。なんだかまた怒らせてしまったらしい。沸点が低いと大変だなぁ。いちいち怒ってたらキリがないよ。
数秒をかけてなんとか怒りを抑えたらしいは、友人たちに先に食事を採るよう言い、少しだけ僕と向き合った。
僕のハシバミ色の瞳を見据え、口を開くの瞳。この真っ直ぐな瞳に射抜かれると、何故だか気持ちがいい。・・あれ?やっぱりおかしいのかもしれない。
「ポッター、この際だから言わせてもらうわ」
「何だい?」
「これ以上私に付き纏わないで。迷惑なの」
「付き纏うだなんて大袈裟だなぁ」
「じゃあこう言えばわかる?もう話しかけないでって言ってるの!」
怒気を孕んだ強い語調でが言った。眉根をぎゅっと寄せて、鋭く僕を睨んで。だけど、僕にはあまり本気には聞こえなかった。だってほら、こんなにも顔が赤い。その赤い頬の色は、怒っているのが理由ってわけじゃないよね?
「何で?」
「・・え?」
「何で僕に話しかけられたくないの?こうして大勢の前で話しかけられるのが嫌だから?」
「そ、それもあるけど・・!」
「恥ずかしいの?」
「それも、ある。・・あんた、騒がしいし・・・」
「・・・ふーん」
少しずつ返事が弱々しくなってきた。核心を突かれることを恐れているのだろう。忙しなく動く視線や瞬きの多さがそれを証明している。これはこれで可愛いなーとか思いながら、僕はを引き寄せ、にっこり微笑んだ。
「本当の理由、教えてあげようか?」
そのとき意外なことに、は一切抵抗をしなかった。突然のことで理解が追いついていなかったのかもしれない。
抵抗されないなら好都合。意地悪く歪む唇をそのままに、僕はの真っ赤な耳に囁いた。
「キミは僕のことが好きなんだよ」
我ながら素晴らしい殺し文句だったと思う。
でもやっぱりは素直じゃなくて。真っ赤だった顔をさらに赤く赤く染めあげ、彼女は再び僕の左頬に右ストレートをぶち込んだ。
落ちたのなら帰さない
そのためにキミを突き落としたんだから。
...end 2009/11/05